2011年10月30日撮影。
逃げたシルポートが、1000m通過56秒5という信じられないラップを刻む。十分に間隔を取って好位を追走するのは、宝塚記念勝ち馬アーネストリー、日本ダービー以来のタイトル獲得をにらむエイシンフラッシュ、京都大賞典を勝利したローズキングダムといった面々だ。この中から直線ではエイシンフラッシュが先頭に踊り出たものの、ハイペース戦の常識通り、差し馬が襲い掛かる展開となりつつあった。
が、並びかけてきたのは伏兵トゥザグローリーだけ。毎日王冠勝ち馬のダークシャドウ、天皇賞(秋)連覇を目指すブエナビスタは、ともに中団から馬群を捌くのに苦労し、昨年の2着馬ペルーサによる後方一気もまだ前とは距離がある。
ここで目を引いたのがトーセンジョーダンの力強い伸び脚だ。これまでGI では昨年の有馬記念5着、今年の宝塚記念では9着と敗れていたが、それでも鞍上のニコラ・ピンナ騎手は、確かな手ごたえを感じ取っていた。「宝塚記念ではデキが一息、ポジショニングも悪かった。でも今日は仕上がりよく、位置取りもいい」と、自信を持ってスパート態勢へ移る。もともとデビュー前から評価は高く、昨秋の東京ではアイルランドTとアルゼンチン共和国杯を連勝していてコース適性も問題なし。前走・札幌記念勝利でふたたび上昇気流にも乗っていたトーセンジョーダンは、その素質を末脚へと変えて坂を駆け上がる。
最後の最後に伸びたダークシャドウ、大外を追い込むペルーサ、内からようやく抜け出してきたブエナビスタらを従えて、トーセンジョーダンは先頭ゴールでGI 初制覇を果たす。母国イタリアでもビッグレースの勝利はないピンナ騎手は、日本での初重賞をこの大舞台で成し遂げたことに喜びを爆発させ、右腕を振り上げる。
そして、勝ちタイムは1分56秒1。2008年の天皇賞(秋)でウオッカがマークした時計を1秒以上も短縮する驚異的な日本レコードが叩き出された。
震災による開催中止、ドバイでの世界制覇、三冠馬誕生……。2011年は日本の競馬にとって“特別な1年”となっている。この天皇賞(秋)もまた、勝った者と見る者の双方にとって特別な一戦となったといえるのではないだろうか。
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